関節可動域の基礎理解

ROM(ロム)」とは、Range of Motionの略で関節可動域を意味します。

主に「ROM」の評価の目的は以下の通りです。

・関節の動きを阻害している原因について探る
・適切なアプローチを選択する際の手がかりにする
・障害の程度を判定する

そしてROMには、Passive ROM他動関節可動域)とActive ROM自動関節可動域)の2つに大別されます。

関節可動域評価に進む前に、各々の違いや特徴について理解していきましょう。

目次

Passive ROM

Passive ROMとは、関節を他動的に動かした場合の関節可動域のことです。

例えば、パートナーストレッチなどで得られる可動域はPassive ROMにあたります。

外力によって動かされた可動域であることから、主動作筋、共同筋含め自発的な筋収縮は誘発されません。

また自動運動と異なり、痛みやそれによる恐怖感などの理由から自身の力で関節運動を制御するといったこともないため、Passive ROMで表される関節可動域はその方の最大の関節可動域であるということができます。

Passive ROMは、その方の機能障害を見極めるうえで欠かすことのできない評価項目の一つとなります。

Active ROM

Active ROMとは、関節を自身で自動的に動かした場合の関節可動域のことです。

ピラティスやヨガなどのエクササイズにて得られる可動域は、このActive ROMのことです。

自身の力で発揮することができる最大の関節可動域であると捉えることもできることから、実用的かつ、現状の身体制御性を把握するうえでの一つの指標となります。


また、Active ROMの場合、筋力に依存した値であるということを念頭に置く必要があります。

基本的に重力下での運動を想定したものになりますので、少なからず上肢や下肢といった自身の身体質量に抗って運動を行う力が必要になります。そのため筋力低下や運動制御が著明であればあるほど、Active ROMPassive ROMの差は大きくなります。

PassiveとActiveの差を深掘り

前述の通り、関節可動域には2つの種類があり、自力で動かすことのできる可動域「Active ROM」、人に動かしてもらう可動域「Passve ROM」があります。

この2種類を具体例を参考により理解を深めていきましょう!

こちらの写真は仰向けの状態から自分の力で足を持ち上げていますので、股関節屈曲のActive ROMとなります。

一方で下の写真では、パートナーに足を持ち上げてもらっているので、ここで動かせる範囲は股関節屈曲のPassive ROMとなります。

いずれも筋肉や関節に適切な可動域がなければ関節は動かないのですが、両者の大きな違いは「自分の力でコントロール(制御)」できているかどうかという点となります。

ここで分かることは、スポーツや日常生活の活動はもちろん自分の力でコントロールするものであり、ただ闇雲に関節可動域を広ければ良いわけではなく、可動域の範囲内で適切なコントロールが行えているか?

このActive ROMを広げていくことがボディメイクやリハビリテーションなど体の症状を改善していくために必要な可動域です。

整体だけで体が変わらない理由

2種類の可動域を理解することで、整体などの徒手的アプローチのみで体を変えていくのが難しいことが分かります。

整体にて筋肉が解れたりすることで、関節可動域は広がりますが、これはあくまでもPassive ROMの話です。

むしろ他動的な可動域だけが広がると、自分の力でコントロールできる範囲以上の関節が動くことになってしまうため、周辺の組織は防衛的に過緊張状態になります。

ActiveとPassiveの差が大きいということは、関節が動く範囲に対して、コントロールできる範囲が狭いことを意味し、最も障害リスクの高い状態とも考えることができます。 

ストレッチや整体などで筋肉を伸ばしたり、緩めたりすることは良いことですが、大前提としてPassive ROMが広がったのちに、然るべき適切な運動によってActive ROMの獲得までがセットであることを必ず覚えておきましょう!

体にとって大切なのは自力でコントロールできることです。

まとめると、関節可動域評価では自動運動(AROM)と他動運動(PROM)の差があるかどうかをチェックし、

  • 根本の問題が可動性由来なのか?
  • 筋力や運動制御(モーターコントロール)の問題なのか?

鑑別し、介入することが望ましいということをご理解いただけたかと思います。

ぜひ参考にしてみてください。

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