
痛みの介入ではコミュニケーションが超重要!

どうもです。
医療におけるコミュニケーションの教育・研究は歴史が深く、運動器疾患に対する介入時の「関係性の構築」の重要性は常に焦点が当てられてきていることかと思います。
それは良質なコミュニケーションが症状の軽減に影響するからです。
これってピラティススタジオでも同様で、「痛み」に介入するケースは珍しくないことですので、「関係性の構築」は我々インストラクターでも必須のスキルになると個人的には考えております。
医学教育の基礎を築いた医学者である、William Oslerは「Listen to your patient,He is telling yuo the diagnosis(患者の言葉に耳を傾けなさい、彼らはあなたに診断を告げています)」という言葉を残し、多くの医師に影響を与えたとあります。
円滑なコミュニケーションスキル、現場でいう問診スキルが備わっていることで、診断に必要な情報の80%は問診で得ることができるともいわれております。1)
実際に近年では、良質なコミュニケーションがどのような影響を与えるかを分析した研究も多くみられるように、顧客満足度の向上だけではなく、クライアントの目標に向けて建設的に取り組むことができるとともに、インストラクター自身の満足度(やりがい)の向上にも寄与するものだと思っております。(当然、結果が生まれやすいこと、コミュニケーションが円滑だと双方にとって良いレッスンになるに決まってますし)

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目次
慢性痛と心理社会的要因
以前、慢性痛に関するコラムも投稿しましたが、慢性痛は器質的原因だけではなく、心理社会的要因の影響も大きいことが明らかとなっていることです。
痛みに対する過度な不安、患者の信念なども多大に疼痛に影響することが知られており、慢性痛においては以下は問診(カウンセリング時)の際に触れておきたい項目です。
- 痛みに対する考え方
▶︎クライアント自身はなぜ痛いと考えているのか? - 痛みに対する感情や不安状態
▶︎痛みをどのような情動で捉えているのか? - 痛みの管理に対する信念
▶︎痛みがある時は安静にするべきとった認識はないか?
このような心理社会的要因からの視点での観察・コミュニケーションにて痛みに対する過度な不安や、負の情動が確認させる場合は、患者教育に基づいた痛みの再教育もプログラムの中に取り入れていく必要があるかと個人的には考えております。
良質なコミュニケーションは痛みを軽減させる!?

A Louwらによる研究[Evakuation is treatment for low back pain(腰痛にとって評価は治療である)]2)によると、外来初診時の理学療法プロセスによる痛みの変化を調査した結果、病歴聴取と身体検査だけで、痛みスコアが優位な軽減を示したと報告されております。
その他に、効果的なコミュニケーションは患者の自己効力感を改善し、痛みが改善したという研究もあります。3)
つまりコミュニケーションを学び、実践するということが、それすらも治療(我々インストラクターでいう改善のためのアプローチ)、痛み(症状)の緩和に繋がることを示唆していますよね。
コミュニケーションのポイント
コミュニケーションのポイントとして、重視したいのが、その真摯さです!
クライアントに対する建設的な姿勢があり、はじめてスキルが上積みされていく。まずはそのイメージを念頭にしましょう。
満足度を高める行動モデル
どのようなコミュニケーションがクライアントの満足度を高め、自己開示しやすい状態へ導けるのか、良質なレッスンを行うことができるのか、Tallmanの研究4)を基にした図が以下の通り。

積極的に相手の話を聴く姿勢 is Kingであることが分かりますね。積極的傾聴を具体化すると以下の通りです。
・適度なあいづち
・相手が話し終えるまで聴く
・相手が抱いている不安を話す機会を与える
このプロセスを反復することがクライアントの満足度につながります。
コミュニケーションスキルを具体化
コミュニケーションスキルは、ソクラテス問答法や動機付け面接法、コーチングなど、様々な体系がありますが、その中からいくつかのスキルを紹介していきます。
クローズド・クエスチョン
Yes/Noや単純な回答を求める質問のこと。
確認んすることが明確にわかっていて選択肢が限定される場合に有効ですが、こちら側の想定以上の質問がまず返ってくることはないと思ってください。(どこが痛いですか?→腰が痛みます。)
オープン・クエスチョン
相手に自由に答えてもらう質問でクライアントの想いなどを聞き取りやすい。
ただクライアント側の思考の負荷量も多く、またインストラクター側の質問そのものが抽象的すぎると、コミュニケーションが滞る可能性もあるため、苦手な方は、予め質問の項目は考えておきましょう。
バックトラッキング
相手の発言をそのまま繰り返して、フィードバックするスキル。
相手にとっては、自身の思考の整理に繋がるとともに、「話を聞いてもらっている」という安心感に繋がりやすいと言われております。
サマライズ
相手の会話を要約してフィードバックする。
簡単に言えば要約スキルが求められるので、難しいことだが、基本的にクライアントさんは専門的な知見がないので、相手の主訴を汲み取り、具体化(要約)し、プログラムやゴールを双方で確立していく必要があります。
ペーシング
会話の速度や声色を相手にそろえて反応するスキル。
コミュニケーションパターンには好みがあり、相手に合わせることによって信頼関係の構築に繋がると言われております。
言語的要素
話すスピード
声の高低
声の大きさ
非言語的要素:
姿勢や表情
動作やジェスチャー
呼吸のリズム
まとめ
円滑なコミュニケーションスキルは、関係性構築、問診(病態予測)、症状の軽減につながる可能性があり、介入の効果を左右するものです。
ぜひ今回のスキルを咀嚼し、明日から現場で活用してみてください!
参考文献
1)Peterson MC, Holbrook JH, Von Hales D, Smith NL, Staker LV. Contributions of the history, physical examination, and laboratory investigation in making medical diagnoses. West J Med. 1992 Feb;156(2):163-5.
2)Louw A, Goldrick S, Bernstetter A, Van Gelder LH, Parr A, Zimney K, Cox T. Evaluation is treatment for low back pain. J Man Manip Ther. 2021 Feb;29(1):4-13.
3)Ruben MA, Meterko M, Bokhour BG. Do patient perceptions of provider communication relate to experiences of physical pain? Patient Educ Couns. 2018 Feb;101(2):209-213.
4)Tallman K, Janisse T, Frankel RM, Sung SH, Krupat E, Hsu JT. Communication practices of physicians with high patient-satisfaction ratings. Perm J. 2007 Winter;11(1):19-29.