
股関節の基礎「大腿骨に対する骨盤の動き」

皆さんは「股関節の屈曲」と聞くとどんな運動をイメージするでしょうか?

過去に骨盤、大腿リズムという形でご紹介したような「寛骨に対する大腿骨の屈曲」をイメージする方は多いのではないでしょうか?
では、下記のような骨盤の前傾、後傾を股関節から見てみるとどう表現できるでしょうか?

骨盤の前傾は、寛骨が大腿骨にお覆い被さるように近づくため「股関節屈曲」
骨盤の後傾は、寛骨が大腿骨から遠ざかるため「股関節伸展」
と表すことができます。
現場ではこの2つの側面から股関節の運動を捉える必要がありますので、
今回は
大腿骨に対する骨盤の動き
を整理してご紹介していきます!
現場で起こる現象を言語化できることを目指しましょう!
骨盤に対する大腿骨の動きについてはこちらをご覧ください。
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目次
腰椎骨盤リズム
前屈動作に見られる腰椎、骨盤の動きをリズムで表現したものを腰椎骨盤リズムと言います。

具体的に前屈では、約60度の股関節屈曲(大腿骨に対する骨盤)と同時に約45度の腰椎の屈曲が生じます。標準的な股関節全体の約50%に相当する一方、腰椎は屈曲可動域における約90%に相当します。前屈動作の初期25%においては腰部の屈曲がわずかに多く、後半の25%は股関節の屈曲がわずにかに多く生じます。
Esola MA, McClure PW, Fitzgerald GK, Siegler S. Analysis of lumbar spine and hip motion during forward bending in subjects with and without a history of low back pain. Spine (Phila Pa 1976). 1996 Jan 1;21(1):71-8. doi: 10.1097/00007632-199601010-00017. PMID: 9122766.
この前屈していく時の動きは同方向性腰椎骨盤リズムと呼ばれ、腰椎と骨盤は同じ方向に回転していきます。
一方直立姿勢で骨盤を前傾させる動きでは、骨盤と腰椎は反対方向に回転していきます。
これを対方向性腰椎骨盤リズムと呼びます。
これからご紹介していく大腿骨に対する骨盤の回転は、全て対方向性腰椎骨盤リズムを基本としています。
骨盤の前傾と後傾

骨盤の傾斜、つまり前傾と後傾は固定された大腿骨に対する骨盤の矢状面上の回転であり、小さな弧を描くように動きます。前傾と後傾の方向は、両方の大腿骨頭中心を結んだ線を軸として、腸骨稜が前方に回転する場合を前傾、後方に回転する場合を後傾とします。
骨盤前傾に伴い腰椎の前弯が増大することで、前傾に伴う体幹の動きが相殺されます。
※相殺されない場合体幹も一緒に前傾していきます。)
股関節90度屈曲で座っているとき、骨盤の前傾により、大腿骨に対して骨盤は約30度大屈曲することができます。
対して、骨盤後傾に伴い腰椎は屈曲し、前弯を減少させます。
この際腸骨大腿靱帯、大腿直筋の筋の張力によって股関節伸展は10~20度に制限されます。
骨盤の前傾、後傾のイメージ↓
前額面上の骨盤回転
前額面や水平面における大腿骨に対する骨盤の回転は、片脚立ち姿勢から考えるとイメージがしやすくなります。

支持側の股関節外転は、遊脚側の寛骨の挙上、つまり引き上げによって生じます。体幹の上部が不動(正面を向いている)の場合は、腰椎は骨盤回転側と反対側に側屈していることになります。
(画像の場合は左寛骨の挙上、腰椎の左側屈)
この大腿骨に対する骨盤の外転は腰椎の靱帯によって制動されるため、外転角度は約30度になります。
また、同側の内転筋群や腸骨大腿靱帯の緊張が強い場合は大腿骨に対する骨盤の外転を制限するため、遊脚側の寛骨は下がったままとなり、外転筋は伸張、内転筋は短縮という位置関係になります。結果として、股関節外転外旋筋の弱化に繋がることが考えられます。
支持側の股関節内転は遊脚側の寛骨が下がることで生じます。大腿筋膜張筋、中臀筋など外転筋の緊張が強い場合は大腿骨に対する骨盤の内転は制限されます。
水平面上の骨盤回転
水平面上の大腿骨に対する骨盤の回転は、長軸周りで生じます。
大腿骨に対する骨盤の内外旋はこちらのエクササイズ動画でイメージはこちら↓
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下記は骨盤を真上から覗き込んだイメージになります。

股関節が内外旋している際に、上半身を正面に向けている場合、腰椎は骨盤の回旋とは反対方向に回旋しますが、腰椎が許容する回旋角度が小さいため、大腿骨に対する骨盤の回旋量はわずかになります。
完全に回旋を引き出すためには腰椎、体幹とともに骨盤の回転を追う必要があります。
現場ではブルガリアンスクワットやランジを行う際に、下記画像のように体幹ごと回旋してしまう場合ケースが多いのではないでしょうか?

一見外旋筋である、大臀筋や中臀筋の伸張を感じられるためこのポジションでスクワットやランジを行っても効き感があるかもしれませんが、これは外旋、外転筋の張力に頼ってしまっているいわば「受動的なポシジョン」になっています。
私たちの歩行や片脚バランスでは体幹が正面に向いた状態での股関節の動きが必要になっていきますので、もし仮に体幹ごと回旋したポジションしか取ることができないのであれば、股関節の内転、内旋制限(外転、外旋筋の緊張)の可能性があります。また、可動域制限がないのにも関わらず体幹ごと回旋してしまう場合は運動制御能力に問題があると考えられるため
股関節後方筋の評価でご紹介した片脚バランスの評価で詳しく見てみましょう!
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今回はすぐに使えるテクニックのご紹介ではありませんでしたが、皆さんが現場で見るお客様の動きを言語化するためにはとても重要なことをご紹介しました。
股関節と歩行に関する解説動画は今回ご紹介した「大腿骨に対する骨盤の動き」の理解が必要になりますので、ぜひ覚えていただき、実際の現場でお客様の動きを観察してみてください。