
股関節伸展制限をThomas testとピラティスで応用

Thomas testは、股関節屈筋群の伸長性の評価に用いる検査です。1)
運動施設の現場では病態に限らず、ボディメイクとして「脚痩せ」が目的のクライアントさんも多いと思います。
「脚痩せ」「下半身の引き締め」を具体化すると、股関節伸展の可動性獲得は優先すべき項目であり、その際に必要となるのが股関節伸展を阻害する「股関節屈筋群のタイトネス」です。おす。
それは ≒「股関節伸展制限」ですね。
股関節伸展制限は腰痛や歩行周期にも影響を及ぼす可能性があるため、見逃すことのできない所見です。
実際の現場でも、私の経験上では、太ももが張るというお悩みの方の99%が股関節伸展制限があります。
筋の短縮などがなくとも、運動制御不全として腰部の代償パターンなども加味すると100%といっても良いのではないでしょうか?
目次
股関節伸展制限が歩行にどう影響するのか?
股関節伸展制限が歩行にどうやって影響してくるのか?
シンプルに振り出しが弱くなります!
歩行の立脚終期に股関節は伸展し、腸腰筋の弾性エネルギーがたまります。反対側の踵接地に伴い、その溜まった弾性エネルギーが解放され振り出しの力と変わることで円滑な歩行を可能としています。
股関節伸展制限があると、この弾性エネルギーが作られず、振り出しが弱くなります。
なので努力的な股関節屈曲が生まれます。大腿直筋などで代償するわけですね、だからこそ歩行に無駄なエネルギーを消費しますし太ももが疲れてくるわけですね。
まとめると
- 歩行には腸腰筋の弾性エネルギーで下肢の振り出しが起こる
- でも股関節伸展制限があると、無理だよね
- だから努力的な股関節屈曲で歩くしかないよね
- はい、だから太ももが疲れちゃう
この場合のアプローチはシンプルです。
- 股関節屈筋群のタイトネスを評価
- トーマステストが便利
- 屈筋群の柔軟性を促す
- 股関節伸展の可動性を出す
- 腸腰筋の遠心性収縮まで持っていく
です!
あわせて読みたい


股関節伸展動作を深掘り
所謂「脚痩せ」にお悩みのクライアントさんは非常に多いですが、そのほとんどが「股関節伸展動作」に問題があることが多いです。 股関節伸展可動域の低下 股関節伸展時...
ピラティスで活用する為の整形テスト

トーマステストにはベッド端から一側下肢を垂らした変法もあります。
個人的には正直どっちでもよくてトーマステスト単体で行うことはほとんどなく、ピラティスのエクササイズで仰臥位の時にエクササイズを応用しつつ、簡易的に評価し、さらにエクササイズでその仮説を検証していくっていうパターンで活用します。
時短で最良の効果を出すにはこの方法が今のところベストです。ピラティススタジオでいちいちベッドに寝かして評価をするということはしません。
▶︎シンプルに顧客満足度が下がるので!あとは運動の中で評価したほうが圧倒的に早い!
じゃあその応用となるエクササイズを教えてっていう考え方はダメです。
まずはトーマステストの完成形を理解しましょう!
理論的背景も!
ここを咀嚼してるからこその現場で応用が色々できるよね?っていうことです。
具体的にはどんな評価なのかというと股関節の動きで、大腿直筋、大腿筋膜張筋、腸腰筋のどの筋の緊張が強いのかを見ていきます。
実際に動画でも解説していきまーす。
Thomas test

目的
- 股関節屈筋群の伸長性の評価
方法
- 患者は仰臥位となる。
- 患者の非検査側の股関節を屈曲させ、腰椎の前弯を消失させる
非検査側の股関節屈曲により、骨盤後傾、腰椎の後弯が生じることにより、検査側の屈筋群の伸長性を評価します。
陽性所見
- 検査側下肢が挙上すれば陽性と判断し、屈筋群のいずれかの伸長性が低下していると判断できる。
注意点
- 非検査側の股関節を屈曲させる際に、あくまでも腰椎の前弯の消失が目的であるため、検者は強く圧力をかけ痛みを生じさせないよう注意する。
屈筋群の簡易的な分別法
検査側の股関節の動きに着目することで、大腿直筋、腸腰筋、大腿筋膜張筋のどの筋が優位に伸長性が低下しているのかを見分けることができます。
股関節外転→大腿筋膜張筋の短縮を示唆

股関節外旋→腸腰筋、縫工筋の短縮を示唆

まとめるとこんな感じ!
- 股関節の外旋→腸腰筋、縫工筋のタイトネスを示唆
- 股関節の内旋→大腿筋膜張筋のタイトネスを示唆
- 内外旋せず陽性所見あり→大腿直筋のタイトネスを示唆

あくまでも簡易的なもので、その他にも「Over test」や「Ely test」と組み合わせることでより正しく評価することができます。
ぜひ参考にしてみてください。
そのまま伸ばそう!
腸腰筋など股関節屈筋群の短縮を確認できたら、そのままストレッチングに入っても良いですよね。
テスト肢位のまま腸腰筋の収縮ー弛緩を利用したリラクセーションや持続ストレッチを行います。

参考文献
1)Lee KM, Chung CY, Kwon DG, Han HS, Choi IH, Park MS. Reliability of physical examination in the measurement of hip flexion contracture and correlation with gait parameters in cerebral palsy. J Bone Joint Surg Am. 2011 Jan 19;93(2):150-8.